再生可能エネルギーの導入量増加に合わせて、国内外で注目を集めつつある系統用蓄電池。投資的メリットがあるため、新規事業を検討中の法人・個人は詳しく知っておきたいところだ。この記事では、系統用蓄電池の仕組みや他の蓄電池との違いを説明し、導入メリットや注意点、今後の市場規模についてわかりやすく解説する。系統用蓄電池とは、電気の安定供給に欠かせないもの系統用蓄電池とは、電力系統や再生可能エネルギー発電所などに接続する蓄電池のことである。電力系統とは、発電所・送電線・変電所・配電設備の総称で、再生可能エネルギー発電所は、太陽光発電所や風力発電所をさす。以下の仕組みで成り立っている。日本は2050年カーボンニュートラルの実現に向け、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの導入量を積極的に増やしている。しかし、これら太陽光や風力による発電方法は、発電量が天候や時間などに左右されてしまう。火力や原子力のような発電方法とは異なり、発電量を人の手でコントロールすることができないのだ。発電量が多すぎると、電気が余ってしまうことになる。電気は多ければ多いほどいいように思えるが、電気はそれ単体では蓄えることができない。さらに需要と供給をつねに一致させないと、電圧や周波数が変動してしまう。これらが大幅に変動すると、電子機器が一斉に故障するだけでなく、電力系統が危険を察知して接続を自動的に解除してしまい、大規模停電が発生するリスクがあるのだ。2022年〜2023年は電力需給のひっ迫が問題視されている。だが一方で、日によっては太陽光による発電量が需要を大きく上回り、出力制御が実施されるケースも増えつつある。出力制御とは、電力会社が発電所のオーナーからの買電をストップする制度だ。もし出力制御が行われた場合、せっかく発電した電気はそのまま捨てることになるのだ。だが、電力系統や再生可能エネルギー発電所に蓄電池を接続すれば、電気が余った場合に貯めることができるようになる。そして電気が不足した際に、その貯めた電気を供給することが可能となる。電気を無駄にせず、安定して供給するためにも系統用蓄電池は非常に効果的なのだ。系統用蓄電池と他の蓄電池の違いは「用途」と「接続場所」蓄電池と聞くと、会社や家庭の敷地内に設置するタイプを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。蓄電池は用途や接続場所によって名称が異なる。敷地内に設置するタイプは需要地併設型蓄電池といわれるものだ。この蓄電池は、日中に自社または自宅で発電した電気を蓄え、夕方や夜間などに使用する目的で設置される。また、太陽光発電所に併設する蓄電池を、発電所併設型蓄電池という。これは系統用蓄電池と似ているが、この場合、蓄電池は電力系統ではなく発電所に接続する。発電したが送電線に流せない電気を、この蓄電池に貯めるのだ。太陽光発電の導入量を増やすには、いずれの蓄電池も非常に重要な存在である。その中でも特に系統用蓄電池は、これからの世界には欠かせないものなのだ。これまでの蓄電方法は揚水発電が主流だった電気はそれ単体では貯められないと先述した。それでは、これまでは余った電気をすべて捨てていたのかというと、そうではない。今の日本では、電気を蓄えるために揚水式水力発電(以下:揚水発電)が行われている。揚水発電の仕組みは下図だ。揚水発電はその名の通り、水力発電の一種である。貯水池を上下につくり、水を上から下に落としてポンプ水車を回転させ、発電する仕組みだ。使用された水は下側の貯水池に貯められる。そしてポンプ水車を逆回転させて水を下から上に運び、必要になればまた落として発電する。この逆回転は、太陽光発電の導入量が多い昼間や、電気の使用量が少ない夜間など、電気代が安いときに行われるケースがほとんどだ。電気を一旦水の位置エネルギーに変換し、必要になればそれを電気に変える。揚水発電は蓄電池のような役割を担っているのだ。現在、日本には約40ヶ所、約2,600万kW分の揚水発電所がある。だが日本政府は2030年までに再生可能エネルギーの比率を全体の36~38%、現在の約2倍に増やすと発表した。もし再エネの導入量が倍増した場合、揚水発電だけでは賄いきれない。揚水発電所を増やそうとしても、大幅なコストと時間が必要となってしまう。そこで出番となるのが系統用蓄電池だ。これまで蓄電池はコストが高かったが、技術の革新によって価格が大幅に下がりつつある。再エネを増やしながら安定して電力を供給するためにも、系統用蓄電池は今後主流になっていくだろう。すでに国内外では系統用蓄電池の導入が進みつつあるいまいち聞き馴染みのない系統用蓄電池だが、国内外では導入が進んでいる。特に太陽光発電の導入量が多いアメリカ・カリフォルニア州では、2022年7月時点ですでに約316万kWもの系統用蓄電池が導入済みだ。日本国内でも、2022年に入ってから系統用蓄電池の導入に向けて動き出すケースが多く見受けられる。地域で見ると、特に盛んなのが北海道だ。下図は、系統用蓄電池の申し込み件数と累計申込量の推移である。(出典:北海道電力ネットワーク株式会社「系統用蓄電池の接続に係る課題と対策について」)2022年時点で、北海道の再生可能エネルギーの導入量は272万kWを突破している(うち太陽光発電が214万kW、風力発電が58万kW)。これは北海道全体の年間最低需要である226.5万kWを超える数字だ。2022年には、北海道で初めて出力制御が実施された。再エネの導入量増加に合わせ、2021年以降は系統用蓄電池の申し込みも増えており、2022年7月末時点での累積申込件数は61件、累積申込量は約160万kWにまで上った。これは北海道エリアの年間平均需要(約350万kW)の半分に迫りつつある数字である。国内企業も、系統用蓄電池の設置に向けて動き出している。2022年6月には九州電力とNTTアノードエナジー、三菱商事の3社が設置の検討を開始。7月には関西電力とオリックスが、和歌山県内に容量113MWの系統用蓄電池を設置することを発表した。8月には、東邦ガスが系統用の蓄電池11.4MWを日本ガイシに発注したことが明らかになっている。国や自治体も系統用蓄電池の導入支援に乗り出した。経済産業省の資源エネルギー庁は、総額130億円の令和3年度補正予算「再生可能エネルギー導入加速化に向けた系統用蓄電池等導入支援事業」を開始。東京都は系統用蓄電池に最大25億円の助成金を出すことを発表している。北海道では半分近く埋まりつつある系統用蓄電池だが、それ以外の地域で導入が進むのはこれからだ。さらに再生可能エネルギーの導入量はまだ目標に達していない。系統用蓄電池の導入は今がチャンスなのだ。系統用蓄電池に参入するメリットは、利益幅の大きさ2050年までに脱炭素社会を実現するために欠かせない系統用蓄電池。企業が新規参入する理由は、脱炭素社会の実現だけではない。多くの企業が目をつけているのは、系統用蓄電池の投資的メリットである。揚水発電では、電気代が安いタイミングで水を上の池に移動させ、電気が必要になれば下に落とすことを説明した。電気が足りていないということは、その間、取引される電気の価格は値上がりしている。揚水発電は安い電気を水に変えて、高くなったタイミングで発電するため、うまく運用すれば多額の利益が見込めるのだ。これは系統用蓄電池でも同じことがいえる。電気を購入する場合、取引するのはJEPX(日本卸電力取引所)だ。JEPXが販売する電気の価格を市場価格とよぶが、市場価格は「気象条件」「電力需給」「燃料費」に合わせて30分ごとに価格が変動する。例えば、晴れた日は太陽光発電の導入量が増え、市場価格が0.01円/kWhになることもある。一方で夕方になれば太陽光発電がストップし需要も増えるため、10円/kWhや50円/kWhまで上がることもあるのだ。電力需給で考えると、市場価格が安くなるのは電気が余るタイミングで、高くなるのは不足するタイミングである。つまり、系統用蓄電池は揚水発電と同様に、電気が安いときに購入して蓄電し、高くなるタイミングで売電すれば多額の利益が見込めるのだ。上図は、2022年9月14日分の北海道エリアにおけるJEPXの市場価格の推移である。12時から14時にかけて、晴天で太陽光発電の導入量が増えたため、市場価格は0.01円/kWhまで下がった。一方、太陽光発電ができず、電気需要が増える夕方(16時)の市場価格は64円/kWhまで高騰している。この日の昼間に電気を仕入れて夕方に売却した場合、単純計算すると粗利率は99.98%となり、大きな利益を見込めるのだ。こういった投資的側面に注目し、新規参入する企業が増えているのである。その一方、曇りや雨など、市場価格があまり変動しない場合に利益が出ないので要注意だ。いつ仕入れて、どのタイミングで売るのか。この運用方法によって利益が見込める。アメリカなどでは、購入した電気に付随する再生可能エネルギーの環境価値も売却できる場合がある。しかし日本では、電気を購入するのはJEPXだ。JEPXで取引される電気には火力や水力由来の電気も含まれており、環境価値はない。そのため日本で系統用蓄電池を運用する場合は、いつ仕入れていつ売却するかが非常に重要となる。系統用蓄電池の市場規模は今後、10兆円を超える見込み矢野経済研究所の調査によると、2021年における定置用蓄電池の世界市場規模は約6,888MW、金額にして4兆2,000億円を突破したという。詳しい数字は発表されていないが、系統用蓄電池が過半数以上を占めたことが明らかになった。この数字は2020年と比較すると、容量は90%、金額は78%増加である。同研究所の予測によると、2022年の同規模は容量が95,835MW、金額ベースで6兆7,500億円となる見込みだ。2021年の実績から比較すると、容量は57%増、金額は60%増である。この数字においても、過半数を系統用蓄電池が占めると考えられる。将来的には、さらに市場規模は拡大するとされており、2031年には容量にして457,880MW、金額で26兆円を超える見込みだ。同研究所は、系統用蓄電池が大半を占めると予想している。つまり系統用蓄電池の市場規模は10年後には、10兆円を超えることが予測されるのだ。afterFITは系統用蓄電池の土地開発から運用までをワンストップでサポートafterFITでは、大規模な太陽光発電所の土地開発から資材調達、施工、運用管理を数多く手がけてきた。揚水発電所の運用も手がけており、多額の収益を上げることに成功している。業務の中で培った専門的なノウハウや知識を活かし、afterFITでは「系統用蓄電池を導入したい」とお考えの法人・個人に向けて、用地の土地開発から蓄電池の設置、運用をサポートしている。通常、蓄電池の設置ができても運用は自社で行う必要があるが、afterFITであれば運用も対応できる。また土地が見つかっていない場合、当社の不動産開発チームが適地探しからサポートすることも可能だ。>afterFITの系統用蓄電池はこちら今後、エネルギー業界には系統用蓄電池が欠かせない。そして今は参入する企業が非常に少ないため、事業化するには非常にチャンスである。導入をご検討中の方、当社のサポート内容や導入費用などを知りたい方は「系統用蓄電池システムと市場運用委託パッケージプランのご紹介ページ」または下記バナーからお問い合わせを。